キャプチャ

 サードインパクト後の混沌とした世界を象徴するかの如く登場した、エヴァ新幹線こと5000TYPE EVA。原作のアニメは公開から20年を経過した現在でも今だ人気衰えず、エヴァ新幹線も来年度へ引き続いての運転が決定したようだ。大九州合同祭から一夜明けた1月16日月曜日、上りの「こだま730号」を小倉→新大阪間で乗車してきた。一日一往復の500TYPE EVAは上りが小倉発が6時54分と早朝で、しかも昨夜は博多で三次会まで呑んでいたのだが、今朝はしっかり早起きして、夜明け前の小倉駅へと向かうことができた。

 CSC_0748
 小倉駅へ入線する「こだま730号」
 
 山陽新幹線の「こだま」として活躍する8両編成の500系。その一編成をアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に登場するエヴァンゲリオン初号機をイメージしたカラーリングに変更し、その博多寄り2号車が500TYPE EVA特別内装車、最後尾の1号車が展示ルームと実物大コックピットに改造されている。そして今からその実物大コックピットに搭乗してくる。こちらは博多~新大阪間の区間を区切って1組が搭乗可能で、今回私達は二番手の小倉~厚狭間で搭乗することとなった。こちらの体験は事前申し込みの抽選制だが、平日の朝7時からエヴァに乗りたい人もそう多くはなかったようで、無事当選し搭乗できる運びと相成った。

 DSC_0710
 エヴァ初号機に搭乗、20年越しの夢が叶いました。

 
小倉~厚狭間の走行時間は約20分。その間に二人交代でエヴァを操縦する訳で、実際にコックピットに搭乗できるのは10分くらい。原作のエヴァ初号機は5分間しか起動しないので、そんなものなのかもしれない。オペレーターのお姉さん二人(ミサトさんと冬月博士のイメイジ?)に案内され、靴を脱いでコクピットへ。目標はアニメ版第一話と同じく第三使徒サキエルを倒すこと。まずはエヴァとシンクロし、使徒を攻撃しつつATフィールドをこじ開け殲滅させる。至ってシンプルだがここは20年来の夢が叶ったということで。交代でコックピットに搭乗した相方も私と同じエヴァ世代ということで楽しんでいた。もう少し時間があればシンジ君の如く「逃げちゃだめだ!」をやりたかったのだが、あまり居座ると次の区間の方に迷惑がかかるので。

 DSC_0703
  エヴァ初号機覚醒、ATフィールドを突破。

 
DSC_0735
  第3使徒サキエルを撃破。

 
1号車のもう半室はエヴァ新幹線展示ルームとなり、エヴァと新幹線車両を絡めたジオラマやパネルが展示されている。こちらは誰でも入場できるので朝から記念写真を撮る人も多い。原作『新世紀エヴァンゲリオン』の放映はもう20年も前。近未来の2015年を舞台にはじめは純粋なロボット戦隊アニメと思いきや、中盤から哲学的かつ抽象的な展開を見せ始め、最後の2話は思いっきり作画崩壊を起こし強引なハッピーエンド。それでも当時の世間や後世の作品に大きな影響を与えたコンテンツになりえたと思う。周囲は「難解すぎて意味が解らなかった」と言っていたが、私は主人公の碇シンジくんの「逃げちゃだめだ!」のせいで、以降の少年、青年時代にどれだけ自分を追い詰めて苦しめたかわからない。死んじゃうくらいなら何もかも放り投げて逃げていいって気づくのに15年もかかったよ!

 DSC_0737
 エヴァ初号機の向こうにカヲル君。エヴァ新幹線の車内放送は彼(CV.石田彰)が担当しています。

 この週末日本列島は大寒波に見舞われ、今日も東海道・山陽新幹線のダイヤが始発から乱れまくっているとのこと。九州は雪はなかったが山陽に入ると線路際に積雪が目立ち始め、瞬く間に猛吹雪に。「こだま730号」は各駅で後続の「ひかり」「のぞみ」に先を譲る旅路となるため、後続の新幹線が遅れれば「こだま730号」もその分待たなければならない。各駅での停車時間も徐々に伸び始め、東広島駅では遂に暫く抑止となってしまった。どうせならこの区間でコックピット搭乗乗車に申し込めば、その分長く居られたのに。

 DSC_0750
 エヴァ新幹線、雪で止まる(東広島駅)

 DSC_0762
  500TYPE EVAといえども、後続の700やN700に先を譲る。

 DSC_0778
 デッキはまるでエヴァの格納庫だ。

 DSC_0766
 碇指令が手を組んで座ってそうな車内。

 DSC_0764
 1995年原作のアニメでは、タバコを吸う女性も珍しくなかったのだろう。

 自由席の2号車は特別内装車となっており、座席や通路、デッキまでもがNERV仕様に描かれ、喫煙室では加持さんとリツコさんが紫煙を燻らせている。全車両を見渡してみましたが平日午前の「こだま」とあって乗車率は高くない。「こだま730号」は20分程度東広島駅で抑止した後運転を再開し、次の三原から先は一気に雪がなくなりダイヤもなるべく平常に戻すとのこと。でもこれにより各駅での停車時間が全く読めなくなった。実は今朝が早かったので朝御飯を食べてなく、各駅での停車時間中に売店へ駆け込む予定にしていた。だがこのダイヤ乱れでその余裕がなくなり、「こだま」には車内販売も無い。結局飲まず食わずで4時間半、終点の新大阪駅まで耐えなければならないようだ。

 eva
 この姿、まさにエヴァンゲリオン初号機。(西明石駅)
 
 DSC_0788
 斬新な流線型デザインで最高速度285キロを達成するも、現在は「こだま」として身を持て余す。

  DSC_0791
 新幹線はニッポンの大動脈だ。

 先程の吹雪が嘘のように晴れの国こと岡山は快晴。ここから山陽新幹線は赤穂線の線路に沿い、短いトンネルを次々に抜けて播磨の国へ。姫路ではビル群の向こうに大改修を終えた姫路城が青空に輝いていた。西明石の先で神戸トンネルに入り、これまた全長16250m、かつては我が国一のトンネルとして名を馳せた六甲トンネルとの間に位置する新神戸駅に到着。名残惜しいが500TYPE EVAの旅もあと一駅となった。大阪の市街に入り、「残酷な天使のテーゼ」のチャイムと聞きなれたカヲル君の車内放送で、500TYPE EVAの旅が締めくくられる。最後はほぼ定刻通りに新大阪着。列車はそのまま折り返し11時32分発の「こだま741号」となり博多へ向かう。20番線のホームにはエヴァ新幹線を一目見ようと多数のギャラリーが集まり、出張と思しきスーツ姿のおじさんも思わずスマホを向ける。若いお父さんに連れられたちみっこが先頭車両で写真を撮ってもらっている。500TYPE EVAの旅が、再び始まろうとしている。