凄い拍子だが、昨夜急に北海道の流氷を見たくなって、そのまま往復のLCCをポチってしまった。

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  オホーツクの海と流氷(イメージ)

 今日の午後に成田を発って、土曜日の深夜に成田に帰ってくることにした。このように私は勢いだけで行動することがある。後のことは考えていないが、長い人生たかが4日くらい行方をくらましても問題はないだろう。それに旅は空いてる時期の方がいい。ゴールデンウィークや三連休に出掛けるなぞまっぴら御免である。

 それに一人になりたい。私の旅行はたいてい誰かと行くか、誰かに会いに行くかの二択なので、日帰りならまだしも、いってきますからただいままでずっと一人の旅行は稀である。そもそも今はそういう気分なのだ。冬の北海道は何処に行ってもとにかく人の気配がない。エゾジカとキツネの楽園になる。そんな中に私だけで一人ぼっちになりたい。

 SNSの世の中。常に誰かと繋がっていて一人になれる機会は無い。東京で暮らしていれば尚更だ。たまにはこうして一人になることで、自分自身を見つめ直すことも人生に於いて大切だろう。一応スマホは持っていくがSNSは極力開かなければいい。だが我慢するのは逆効果なので、アプリは消さずに留めておく。要するに、冬の北海道へ心の再起動ボタンを押しに行くのだ。 家でゴロゴロしていたい気持ちもあったが、自宅のPCの前に座っていても何も変わらない。行かずに後悔するより行って後悔。時間もお金も十分あるではないか。それに、汽車の切符と違ってLCCはキャンセルできない。今回は自分で自分に冬の北海道に行くという縛りをかけたのだ。こうでもしないと私は動かないから。

 こうして2月1日木曜日の昼前、私は手ぶらで家を出た。4日程度の逃避行に荷物なんて要らない。持っていくのは財布とスマホと愛用のカメラくらいだ。自宅の前がバス停で、ちょうどバスがやって来たので乗った。いつもの営団ではなくE電の駅まで出る。京成電車に乗り換えまずは成田空港へ向かう。やって来た電車は途中の京成佐倉行きだがこれに乗った。ガラガラのロングシートの端っこに座ってじっとしておく。どう考えてもこれから北海道の最果てへ行く格好ではない。

 京成佐倉でしばらく待つと成田空港行きの電車がやってきた。こちらは大型スーツケースを従えた乗客もちらほら居て、「非日常」の空気がある。これから乗るのは成田空港を13時50分に発つバニラエアJW917便で、新千歳空港に15時35分に着く。電車は12時半位に空港第2ターミナル駅に到着した。ここから先は人の流れについていけば勝手に第3ターミナルに着く。LCCにはまだ慣れてないので、こういう時は周りに合わせておくのが私の処世術だ。連絡バスに乗って無機質な空港の構内を往く。解らなければそこら辺の係員に聞けばいい。LCCは何かと面倒くさいイメージが合ったが手ぶらで乗る分にはシンプルだ。自宅のプリンタで印刷した用紙を持って、30分前に保安検査場へ行くだけでよい。検査場の手前にはレストランやコンビニや書店が連なっている。殺風景な第3ターミナルでここだけが賑やかだ。お昼だが食欲がないので御飯は向こうで食べよう。ふらっと入った書店で冬の北海道のガイドブックを購入した。今回の旅行はあまりに突発的で、旅程どころか何処に行くかも全く決めていない。この本は機内で読むことにする。バイブルは札幌駅のキオスクで道内時刻表を変えばよい。

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  とりあえず、まず飛行機に乗ろう。

 こうして13時50分、JW917便は成田空港を出発し北海道へと向かった。成田は晴れていたが飛行機はすぐに雲の中に入ってしまった。機内には中国の観光客が多く、私の隣にも中国人の夫婦が座った。隣の夫は機内が空いていると見るや他の席に勝手に移ってしまった。ただでさえ狭い機内だ。その方がお互いのためだろう。前方の席で中国人の子供が騒いでいる。よくある光景だ。

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  あっという間に北海道

 機内で読むつもりで購入したガイドブックはほとんど読めなかった。慣れない飛行機で心がしんどく、結局機内では雲の中でじっとしていた。次に陸地が見えたときは一面の雪景色で、しかも強く吹雪いている。それでも新千歳空港にはほぼ定刻に到着した。ここからノープランの冬の北海道逃避行がはじまる。まず駅のみどりの窓口で「バニラエアひがし北海道フリーパス」を購入した。新千歳空港発「札幌、小樽、旭川と石北本線、釧網本線、根室本線、石勝線の内側」が今日から5日間乗り放題で、自分で言うのも何だが、私がフリーきっぷを持てば鬼に金棒だ。新千歳空港駅からはまっすぐエアポート号に乗った。外は強く吹雪いている。もちろん傘は持ってないが車内の誰も傘を持っていない。冬の北海道ではそういうのが普通らしい。車窓に建物が増えてきて、札幌都市圏に入った。

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  札幌は午後の5時。

 札幌駅、外は猛吹雪である。時刻は午後5時を過ぎ、そろそろ帰宅ラッシュが始まる。正直今夜の予定は何も決めていない。まだこの時間なら網走行きや釧路行きの特急もあるが乗らないことにした。晩御飯はススキノや狸小路まで行く気力がなかったので、札駅近くの二郎に行った。店内は空いていた。

 猛吹雪の中を歩くだけでこころがしんどい。北海道に来た途端に活動限界だ。時刻はまだ午後の6時だが、札幌駅近くのビジネスホテルを片っ端から探して、北18条に3500円のホテルを見つけた。札駅からも歩けない距離ではないが猛吹雪なので二駅だけ地下鉄を利用する。3500円の割に客室は広く清潔で、これは自宅のようにくつろげる。ここに来てようやく旅行してるんだなという実感が出てきた。デスクに冬の北海道ガイドブックと道内時刻表を広げて、明日から3日間の行程を制作した。1日目は最果ての根室まで行って納沙布岬。2日目は釧網本線沿いの摩周湖と屈斜路湖を見て川湯温泉に泊まる。そして3日目は網走で流氷。恐らく行く先々で破綻すると思うが、それもまた旅の楽しみだ。

 とにかく、こうなってしまった以上は、4日間の逃避行で心の再起動ボタンを押し、新たな気持で東京に戻って新たな人生を歩みたい。そのための4日間だ。今夜はその1日目としてここ札幌のホテルで心を休めたい。人生数万回の夜のたった一夜なんだからこういう過ごし方もありだろう。外は猛吹雪。客室の暖房を全開にして寒さに備える。毎週楽しみにしている刑事ドラマを見つつ、明日からの旅行のことや、心に浮かんでいくよしなき事を色々と考えつつ、冬の北海道のホテルの一室で非日常の夜を過ごした。明日は札幌7時発朝一番の特急列車に乗る。

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   では、4日間の冬の北海道逃避行が、はじまります。